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フランダースの犬の中に絵を描くヒントを模索中。
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青空文庫翻訳版のフランダースの犬を電子書籍化とAmazonペーパーバック化して出版するとのことで、翻訳家の荒木光二郎さまにお声をかけていただき、挿絵を担当させて頂きました。

https://amzn.asia/d/3tegKs0

原作小説の挿絵なので、結構辛いシーンも多いかと思います。
いつもTwitterやpixivで投稿している明るい感じの自分のFAとは異なるものですが、

良い機会と巡り遭い、小説をじっくり読み向き合って自分なりに描いたつもりです。

お時間がありましたら是非一読して頂けますと幸いです。

自分の場合はどうしてもアニメ版と比較してしまうので、
あとがきは本に書かない代わりにどこかで公表します、ということでここで後書きを書きます。

※荒木さんのあとがきには、ベルギーのフランドル地方というオランダに近い特殊な文化圏であることや、当時のフランダースの労働犬の犬種が実際にどうであったかが書いてありますので是非ご覧ください。

(よくよく調べると、「ぼくのパトラッシュ」の描写が必ずしも正しいわけでもないんですって……!)

絵を描く過程で気が付いたのは

⚫従来の絵本や小説の挿絵の多くに聖母大聖堂に階段が描かれているが、現代の実物には階段がないこと

歴史的な建造物は修繕工事をされて行っているためネロたちの時期はあったのかもしれません。

はたまた、当時の巨匠たちが、大聖堂をネロとパトラッシュの上がるステージとして考えて見立て作画をされていたのかもしれません。

自分にそこまで調べて辿り着く事ができず、機会があれば結論を知りたいです。

⚫︎本来の家は葡萄のの木の蔓に追われた砂壁でできていた

⇨これはアニメでは家自体が蔓で覆われていません。でも、よく見ると牛乳缶を干している木の柵になんらかの植物の蔓があります。原作を反映したポイントなのかもしれません。

国会図書館に会員登録しているならば、

現在ご自宅のPCからいろんな100年以上前のフランダースの犬の小説が読めます。

個人的には挿絵がワンポイントで文章の真ん中に描いてあるこの本がおしゃれだな思いました。
ネロとパトラッシュのデザインの雰囲気もアニメに結構似ている。

森康二さんの初期デザインの髪型からも、参考元はこれなのかも……と言うのを見つけました。

https://dl.ndl.go.jp/pid/1630791


また、現地の当時風の家々が保存されている写真を見てあんまりにも雰囲気にそっくりで驚きました。

ネロやアロアが、あんなお家に住んでたのかもしれないなあと、空気感が伝わってきました。

アニメの昇天シーンだけ有名になり過ぎてしまいネタにされがちで

でも本当は絵を描く心理描写が盛りだくさんバイブルの

本当の「フランダースの犬」という作品をなんとかもっと良いふうに知ってもらいたいと常々思っています。

今回のことでは改めてこの物語は、

労働犬として生まれながらも幸運な半生を過ごした犬のパトラッシュ、
そして生まれながらの芸術家で絵が描きたいという信念を曲げられなかった少年の2人が主人公のお話だと思い知りました。

小説版はパトラッシュの気持ちも言葉で描写されているのでぜひ一読してみてください。

そして、絵が描きたいという信念をもって生まれた人に焦点を当てたお話でもあります。

絵描きの気持ちを描写する児童向け小説で有名なものは滅多に無いと思います。その感覚こそ独特で共感性もあまりないのかもしれません。

だけど、どうしても絵が描きたいという心を持った人は、子供の頃から周りとは異なる幸せを感じ、他のどんなことよりもキャンバスに向き合いたい感情が一生付き纏うもので、ネロという人物像はそんな気持ちの化身であると感じます。

絵だけでなく、0から1を作りたいと思う気持ちという広い観点で、

いま頑張っている様々なクリエイターさん達にはどの時代でも強く響く作品なのではないかとも思います。

死を幸せや救いと言うべきではないけれど、

読み手の考え方次第で果たしてこれが本当に不幸なだけの物語なのかすら変わってくるのかもしれません。


さいごに

今回の経験は、フランダースの犬という作品の1ファンとしてこの上ない光栄であることだけでなく、

出版される本の挿絵を描くのも初めてでとても勉強になりました。

そしてこの機会がなければ知り得なかった小説の1文1文に散りばめられた、
いくつもの細かな魅力を新たに知ることができたと感じます。

只今は数か月間頑張ってきて、文章にはうまく言い表せないくらい、

笑えないくらい、、実は結構頑張ってきて。

ようやく形になって本当に良かったなあと思うばかりです。

ひとつの「フランダースの犬」を描かせて頂き、形として残る機会に恵まれたこととても嬉しく思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。


追加写真08/24

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Twitterにフランダースの犬のファンアート投稿を始めて1周年なので振り返って思ってることまとめてみました


ネロはアニメのストーリー中、2度筆が止まります。
1度目は、自分の働いたお金で画用紙と鉛筆を購入した時に
もったいないような気になり、失敗を恐れ描くのを躊躇したためです。
何を描いたら良いか、自分の気持ちもわからなくなってしまいます。
このスランプはアロアの言葉によって解決のきっかけを掴みます。
「パトラッシュを描けば良いに決まっている(次はわたし)」
「紙に向かって悩むのではなく、いつも通りかけっこしたり遊んでいたら自然に描けるはず」

そんなアロアも、レース編み(「丘の上の木の下で」等)で、はじめて自分の手でゼロから1をつくり、物作りをする人の気持ちを考えています。


2度目のスランプはルーベンス展のコンクールの練習として絵を描いている際に、おじいさんがアントワープの街で1人で仕事(八百屋の店番)をしている事を知ったときです。

絵を描く時間をおじいさんに作ってもらっていることに気が引けて、絵を描く気になれず手伝ったり、家事に勤しみます。
その後、過労で倒れてしまったおじいさんの看病をしながら、
減った牛乳運びの仕事のことを気付かれないように、おじいさんの前では絵を描いているふりをしています。(仕事の状況は後に知られることになります)

そして、おじいさんが亡くなったときは最大のスランプです。
この状況下では誰でも絵を描く気にはなれないはずですが、
コンクールの提出期限は迫っています。

落ち込むネロにアロアは思い切って自分で描いたおじいさんの絵を見せます。
ネロの事が大好きなアロアは、彼にとって一番大切な気持ちを節々で思い出させてくれる的確なアドバイザーです。
このことがきっかけでネロは「コンクールの絵として、おじいさんを描きたい」という意思を自分の中から見出し、亡くなった悲しみでぼんやりとしか見えていなかった顔もはっきり思い出すことが出来ました。
(この心境の変化をネロは牧場の夫妻に「おじいさんが帰ってきた」と伝えています。)

絵のテーマとして、おじいさんを描くことを決めたネロですが、なかなか良い構図が思いつかず家の中で悩んでいました。
そんな時、心配してやってきたミッシェルさんに嬉しそうに駆け寄るパトラッシュの姿を目にします。
夕日に照らされたそのシルエットをおじいさんとパトラッシュの日常光景と重ね、描きたい絵の構図がひらめく瞬間が来ました。

ミッシェルさんにすがって泣くことで、死別の悲しみを乗り越えたネロは、気持ちを切り替えおじいさんに最期に買ってもらったコンクール用のパネルについに筆を下すのです。



構図(アイデア)のひらめき、それを絵に表現する気力、労力は平常心が整った状態でないとなかなか難しいものです。
そこに必ずやってくるスランプというもの。
日々生きていく中で、どうすべきか分らなくなったとき、人は結局は自ら抜け出さなきゃなりません。
しかし、解決策は自分だけで探すのではなく、人との交流の中にも大きなヒントがあるように思います。

「心の目で見ないと描けない」
「はじめから人に見せようと思って絵を描き始める人は居ない」
フランダースの犬には、絵を描くことについて色々な名言が出てきます。

AIが精密な絵を生み出せるようになった昨今、
絵を描く人、描きたいと思う心の在り方は、今後よりいっそうに考えていかなければならないのかもしれません。
今年もハロウィンを過ぎました。
早いもので、もうじきクリスマスの広告が街をにぎやかにする季節です。
アロアの誕生日は収穫祭(10月31日)の前後だということです。
アニメ上ではアロアはまだ半袖を着ているので秋頃といったざっくりした設定なのかもしれません。※調査中です。

一方、ネロの誕生日は12月24日のクリスマスイブです。
こちらは公式ガイドでも書かれています。
これはネロの本名のニコラス、サンタクロースのモデルとなった聖ニコラウスが由来のためです。

2年間を描いたアニメ上では、クリスマスは「アロアのいないクリスマス」、「2千フランの金貨」で2回登場します。
1年目の段階では誕生日の言及はありませんが、
最後にネロがアロアの家を訪ねたシーンで、クリスマスと誕生日を祝おうとアロアが呼び止めています。

名前からわかる誕生日ですが、絵のコンクールの発表、すなわち最後の日が偶然にクリスマスイブとなるのも皮肉めいています。
ただ、前回書いた記事の考え方通りで言えば、永遠に家族一緒に好きなだけ絵を描けるところに行ける日ともとれます。

このブログにたどり着かれた方々にも、
クリスマスイブを命日として考えるのではなく、生きてきたネロの誕生日として祝福して頂ければと思います。

サンタの歴史
https://yakult-lady.jp/mama-yell/6082

アロアのモデルは前年のハイジのパイロットフィルムに使われた
森やすじ先生の作成されたハイジがモデルと見て取れます。

※ユキちゃんを抱いている同じ構図があります。
なおこのオランダの民族衣装は、ベルギーでは浸透していない
ため、本国では受け入れにくい部分があったそうですが、前の記事のとおりフランダースの犬のアニメは80年代のベルギー観光を賑わした大きな動機ともなっています。

この古典的な原作を7~90年代日本で具体的なキャラクターとしての姿で描いたアニメ作品群が、ある種の本物の史実として
現代の実写映画に投影されていたりもします。
知られれば知られるほどに、ハイジやフランダースの犬、世界名作劇場は実在の人物以上に存在しているのです。

その反面、昔から多くの人に愛された作品やキャラクターがいつまでも側にいることは、当たり前の事じゃないと感じます。


ここからは少し不快に思われる方がおられるかもしれないので
クッション置いておきます。
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プロフィール
HN:
ぽこ
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性別:
非公開
自己紹介:
絵を描くことが大好き。
去年フランダースの犬(1975)を視聴したことで主人公ネロの生まれながらの絵描き魂と作品のもつメッセージに魅了される。
Twitterでは伝えきれない部分を書いていきます。
他の世界名作劇場ではペリーヌ物語が好き。
P R
Admin / Write
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